Voice #007

~プロフィール~

■性別: 男性
■年齢: 20代
■所有HA-11: スタンダードモデル(ボリュームツマミはヴィンテージモデル使用)
■所有プレーヤー: Acoustic Research AR-M2,HiFiMAN HM-602slim他
■所有ケーブル: KOJO KS-M4
■所有イヤホン&ヘッドフォン: ULTRASONE Tribute 7,iCans Final audio design pianoforte ix  audio-technica ath-ck100他
■普段聴く音楽: JAZZ、J-Pop、R&B等ジャンルを問わず幅広く

~コメント~

はじめに
昨今のポータブルオーディオブームも相まって、市場にはメーカーの技術と情熱が込められた数多くのポータブルヘッドホンアンプが存在しております。
しかし、その中でHA-11は一際輝いており「音楽」と「作り手の魂」を感じられる唯一無二のアンプです。

出会い
もともと、「ヘッドフォンブック2010」という書籍にHA-1が掲載されていた記事を目にしたことがあり、MHaudioさんの名前は知っていたものの実機を手にする機会のないまま早7年…。
この度ヘッドホンアンプを新調しよう!と思い立ち、様々なメーカーの機種を試聴しましたが思うような製品にたどり着くことが叶いませんでした。
そんな中、ふと頭をよぎったMHaudioさんの名前をインターネットで検索してみると、何とHA-11なる製品が発売されておりまして……
TSUTAYA TOKYO ROPPONGIさんにて試聴させていただいた後、ホームページの方から直接オーダーさせていただきました。

外観
アルミ削りだしのボディは硬質で冷たそうな印象を与えますが、実際に触れてみると想像以上に柔らかく、温かみのある質感となっております。指先にしっとりと吸い付くような触感は、是非とも実際にお手にとって試していただきたいです。ヘアライン加工もまさしく工芸品と呼ぶに相応しい美しさであり、明るすぎない光沢感が品格を感じさせる仕上がりとなっています。
自宅使用時及び外出時には、傷などが付くことを恐れ、ペリカンケース1050を収納箱として使用しております。
余談となりますが、セーム革のクロスでこまめに拭いてあげますと、ツヤが生まれてオススメです。
ボリュームツマミは、別途オーダーさせていただいたヴィンテージモデルとなり、通常の物よりサイズが大きめになっております。こちらの輝きも本体の美しさと相まって、自分だけの一台といった特別感を演出してくれます。

使用感
フロントパネル上部に電源のスイッチがあり、ON時には青色のLEDが輝きます。またサイドパネルにあるスイッチをecoモードからevoモードへと変えることで、こちらの青色LEDに加えて、赤色LEDが同時に光ります。なお、このevoモード使用時のみ、バッテリー残量が少なくなった段階で赤色LEDが消灯して交換時期を知らせてくれます。こういった細かな点への心遣いにも感動させられます。ボリュームノブの動きもスムーズで、音量の変化も非常に滑らかであり、微調整も行いやすく仕上がっております。
右側のサイドパネルには、ゲイン調整(Hi,Lo2段階)とバスエンハンスのオンオフ及び周波数切り替え、電圧evo/ecoモードの切り替えスイッチが用意されております。音の変化に関しましては後述します。

 

本体背面にはネジが2本あり、指で開け閉めを簡単に行えるよう工夫された作りとなっています。こちらのネジとパネルを外すと、バッテリーの交換が可能となっています。使用電池は9V電池が2本で、家電量販店や100円ショップ、楽器屋などでも簡単に購入が可能です(私が購入に踏み切ったポイントの一つとして、この電源部があります。一般的なポータブルヘッドホンアンプに使用される単三、単四電池と比較すると、コンパクトな筐体の中で上手にアンプを駆動してくれており、音に繊細さや厚みが生まれるように感じます)。交換も非常に容易であり、ネジとパネルを外して本体を傾ければ「スルッ」と落ちてきてくれます。新しい電池を入れる際も、プラスマイナスを確認して滑り込ませたら、あとはパネ
ルとネジを締めるだけで完了し、ストレスフリーな設計となっています。

音を聴いてみて
外出先での使用をイメージし、以下のセッティングにてレビューを行いました。
※なお、HA-11のエージングは50時間程度でのレビューとなります

◎使用プレーヤー:Acoustic Research AR-M2
◎使用ヘッドホン:ULTRASONE Tribute7
◎使用ケーブル:KOJO KS-M4

◎使用音源(全てWAV 44.1khz 16bit)
・Oscar peterson trio /We get requests(SHM-CD)
・Fritz Reiner 指揮、Chicago Symphony Orchestra / ベートーヴェン交響曲第7番&「フィデリオ」序曲(XRCD2 SHM-CD)
・久保田利伸/L.O.K

◎HA-11セッティング:Hiゲイン/バスエンハンスOFF/evoモード/エージング50時間程度

以下はTribute7を使用してのレビューとなりますが、HA-11を購入する際のリファレンス用としてこのヘッドホンを使用致しました。
(DAPやPCDPへの直挿しでは音場がそこまで広がらず、全体の音圧や低音域も弱々しくなってしまい、ドライブ力のないポータブルヘッドホンアンプをかませても、閉鎖された狭い空間から抜け出せないような感覚が見受けられてしまうため、満足に鳴らしてあげることが比較的難しいヘッドホンであると感じております。)

HA-11を通してあげると一聴して感じられるのが「ニュアンスの表現が格段に上手くなる」点です。
We get requestsではベースの深みと厚みが増し、そこに膨らんでいく残響音が現れます。ピアノの温かみのある音がしっとりと響き渡り、シンバルレガートのリバーブ感も消えゆく寸前まで表現されているのが分かります。音場も広く、見通しが良くなりながらも、SHM-CDのレコードライクでウォームな音がこれでもかと伝わってくる、この感覚を味わえたのはHA-11が初めてです。
交響曲第7番&フィデリオでは「静と動」の表現力が増し、音の粒立ちの良さが感じられます。全体を通して躍動感の溢れる作品となっていますが、オーケストラの迫り来る音の迫力と、HA-11の空間再現力の高さから思わず心拍数が上昇してしまいます。生の演奏を眼の前で聴いた時の感動にまさしく近いものを感じられる、これは高い完成度の製品であるからこそでしょう。
L.O.Kではファンキーなビートとシンセサウンドの響きに厚みが増し、よりライブ会場で聴く体全身でノリたくなるサウンドに近づいたことに驚いています。一方、メロウなバラードではボーカルの息づかいにドキッとさせられ、細かなしゃくり、こぶしまでしっかりと音を届けてくれます。

総評としましては、HA-11自体の音の色付けは非常に少なく、プレーヤーと音源の音に忠実に増幅した上で、十分なパワーでヘッドホン・イヤホンを鳴らしてくれるアンプといえます。こう表現をしてしまいますと、ある意味で優等生すぎて無個性な印象を与えかねませんが、このアンプはそこにとどまる器ではありません。微細なニュアンスを聴き比べてみると、本当に細やかな「原音再現」を行ってくれていることに気づかれるかと思います。
自分の音楽環境に、HA-11という表現力豊かな演奏家がやってきて、多様なジャンルの楽曲を、そのプレーヤーとヘッドホン・イヤホンの性能を最大限に引き出した上で演奏してくれる…といったイメージをもっていただければピッタリかと思われます。

番外編
メインレビューではTribute7を使用した際の音の変化について述べましたが、イヤホンをお使いの方にもHA-11を是非ともオススメしたい!と思い、その情熱をこちらの方で伝えさせていただければと思います。
ダイナミック型のイヤホンでは、総じて低音の量感と音の歯切れの良さが加わる印象です。特にpianoforteシリーズのような半解放型のイヤホンでは厚みのある低音域と音場感の拡大が狙え、生演奏に近い音を奏でてくれます。
近年、続々と新商品が発表されているBA型のイヤホンにも、HA-11は非常にマッチしております。個人的にはBA型のイヤホンについては、音源等の源流部分にはこだわりつつも、アンプに対するドライブ力はそこまで要求せずに楽しめるという印象を持っておりましたが、HA-11を繋げてみてそのイメージが完全に払拭されました。HA-11の持つ駆動力がBA型の音場の広さと定位、音の粒立ちに大きく寄与し、全体の音像から微細な音表現に至るまでブラッシュアップされた感覚です。ハイブリッドBAでないタイプで、特に中音域〜高音域にかけて重点を置いたチューニングをされているBA型のイヤホンは、特に相性が良いと思われます。また、ここから先は個人の楽しみ方にもよるかとは思いますが、Westone

UM3XやATH-ck100(ちょっと旧型でしょうか(笑))のような、量感は少なく質の良い低音を奏でる機種に対しては、是非HA-11のサイドパネルにあるバスエンハンスのスイッチと周波数の切り替えを試していただきたいです。量感が程よく増え、心地の良い低音が生まれます。もちろん、機種により相性があるため、ご自身の好みのサウンドにチューニングしていただくと良いかと思われます。

最後に、そんなBA型に対して、市場から姿を消しつつある耳掛け型イヤホンにもHA-11は新たな彩りを加えてくれます。10年以上連れ添っている、audio-technicaのATH-EW9を繋げてみると、まるでイヤホン自体が喜んでいるかのように濃密かつ艶やかな音を奏でます。直挿しの場合と比べると振動板とハウジング全体にパワーが行き渡り、音像と定位がくっきりする上、残響音や弦のかすれといったニュアンスまでもが繊細に描き出されます(感動のあまり、カバンにHA-11とDAPを詰め込んで、公園を散歩しながらEW9の音に聴き惚れていました)。
ヘッドホンはあまり使われず、イヤホンをメインに使用されている方にも、HA-11は自信を持ってオススメできる製品です。

最後に
試聴の際、一聴して「この子とは長い付き合いになりそう!」と思われること、オーディオがお好きな皆様でしたら一度は感じられたことがあるかと思います。私とHA-11の出会いはまさにその直感を感じさせるものであり、これほどまでに様々な音源や機種を輝かせてくれるアンプは、そう見つかるものではないと思います(HA-11に辿り着くまで、本当に色々なアンプを試してきました……)。残念ながら、気軽に試聴できる環境がお住いの近くに無い方も多くいらっしゃるかとは思いますが、「色付けが少なく、原音に忠実でかつ、ヘッドホン・イヤホンの性能を最大限まで引き出してあげられるヘッドホンアンプが欲しい」とお考えの方には、是非とも一度この音を聴いていただきたいです。